
- Bernhard Schlink
- Vintage
感嘆。
深い。深すぎる! 3回読んで、3回とも解釈が変わった。 そして3回とも泣きました。 これは、読む人によって解釈が分かれるだろう、 読む人の数だけ解釈が生まれるだろう、なんとも読みごたえのある作品。 しかし、主人公とハンナの歳の差に淫靡な雰囲気を醸しておきながら、 実はこの歳の差にはとても大きな意味があった。 その関係は、親子や教師と教え子などでは決して成り立たず、 男と女でなくてはならない必然性があった。 そして、15歳という少年の微妙な年齢も重要であった。 少年が後に苦渋し、トラウマを抱えて生きていくための絶妙なタイミング。 計算されつくした見事なプロット。 年齢、感性、経験、性別…あらゆる角度で解釈が違うだろう。 間違いないのは、読み終ったあと、考え悩むこと。 そして、恐らく読者一人ひとりがそれぞれの正解を導き出すということ。
読む者に多くの問いを投げかける
映画を観て、いくつかの疑問を持ち、それを解決しようと読んだ。 映画とほとんど同じ展開なので分かりやすく、話しの理解は深まった。 そしていくつかの疑問の答えは得られたが、その代わりに新たな疑問も出てきた。 それは疑問というよりは、自分自身への問いかけに近い。 なぜミヒャエルはこうしたのか、自分ならどうしたか、などなど。 とにかく考えさせられることの多いストーリーだ。 父は言った 「他人がよいと思うことを 自分自身がよいと思うことより 上位に置くべき理由はまったく認めないね」 この言葉はハンナの生き方そのものだった。 ハンナの人生が不幸せだったかどうか それは誰にも分からない この本を読んで持つ疑問に対して 作者は答えは用意していない。 読む者それぞれが至る思いがその答えだということだろう。
濃やかに生きられる罪の意識
自己と他者の存在の解し難さについて、或いは幸福の正体の分かりづらさについて、少年のようなまなざしで考え続けるしなやかな文体。そこに巧みな設定によって、失われた過去への(ハンナの)抑圧された視線が導入される。そんな人生の視界の中に罪を見出す。人生の中の異物にはなりようもない濃やかな感情にすら見紛うように、罪の意識は生きられる。自己の存在そのものを考えるかのように。ハンナは裁判長に向かって、「わたしは…わたしが言いたいのは…あなただったら何をしましたか?」と問う(129頁)。この問いに何かを付け加えることはできないが、何一つ差し引くこともできないと、思う。ハンナが自分のやり方で自己の秘密をかばおうとしたことを主人公は、「みすぼらしい真実であり、みすぼらしい正義」と言い、「その戦いは彼女の戦いだった。」という(154頁)。「理解しようとすると、それが本来裁かれるべき形では裁けないと感じた。」「その作業はぼくにとって終わりのないものだった。」(180頁)。主人公の意識はハンナに対して罪を負うようになる。その罪は主人公を生涯にわたって苦しめる。裁判で審理される事件は、戦時下であれば、類似の史実は複数あろうと思われる。その意味で、特異な事件の組み合わせが本書の特異な読後感を作っているわけではなく、むしろ特別な文体がこの作品の特別なパースペクティブを担っていると思う。その限りで本書は文学作品であって、(訳者あとがきが言及しているような)思想に対するクリティシズムのようなものの対象としては、扱いづらい(そのような方法では作品の大切な点を掬いづらい)のではないかという気がする。(稀有なことだと思うが)この小説は複数の主題が絡み合ってできているように思う。あとがきがいうように、何度も吟味するように読まないかぎり核心に近付けていないような気もする。激震級の本。
独特の静謐感
年上の女性、ハンナとの恋。逢引のたびに朗読をさせられる主人公。 ある日、突然、ハンナは姿を消した。 主人公が、高校を卒業、大学生となったとき、裁判所で二人は再開する。 ハンナが隠していた秘密とは?それを知った主人公は? 淡々とした語り口に、漂う静けさ。 読後はじわ〜っと感動が広がります。
失敗した推理小説
まあこれは純文学ではないね。推理小説の一種。しかもその肝心のネタが「ありえない」。中世の農民じゃあるまいし、20世紀のドイツでああいう仕事をしていて、あれはありえない。そのありえないことが核心になっているのがありえないし、それを隠したいがために死刑になるかもしれない危険を冒すのもありえない。 ないない尽くしである。でもこういうのが世界的に売れるんだから、どこの国でも「一杯のかけそば」に感動する大衆はいるってことさ。
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